長嶋正樹の靴屋稼業50年 その10

店は八重洲地下街、池袋、十条、府中と次々に出店して行く。

僕は府中店の主任になり、やっと一人前になりかけていた。

12月のある雨の降る日、靴の配達をしに来た運転手のにいちゃんが『凄い事件が起きた!』と興奮して店に入って来た。

東芝府中のボーナスが強奪された 『三億円事件』 だ!

その時、白バイ警官に化けた犯人が、興進ゴムの半長靴(ブーツ)を履いていて、府中店で同型の半長靴を売っていた。

捜査に来た刑事に 『売った覚えはないか』 と訊かれたが、全く記憶になかった。

それでも遺留品のポスターに掲載する為に、同型の半長靴を府中署の捜査本部に貸し出したのだが、事件は迷宮入りしてしまった。

1968年のことである。


続く


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